最近どうやら、ハリウッドはネタ切れに喘いでいるらしいですね。その元ネタ探しとして、日本アニメに注目しているみたいです。ドラゴンボール実写化の話題も記憶に新しいですし、私の好きな攻殻機動隊やカウボーイビバップも実写化の予定があるらしいですし。まあ、日本アニメでなくとも、ハリウッドでは、ここ最近原作が日本モノのリメイクが盛んではありますけれども。シャル・ウィ・ダンス?とか呪怨とかね。
今回のNHKスペシャル「日本アニメ vs ハリウッド」の中で特に私が興味を引かれたのは、ハリウッド製作の鉄腕アトムCGアニメ化の話。こういった日本モノがハリウッドで実写化あるいはリメイクされるとき、あまりにも原作とかけ離れていて、原作ファンががっかりするという現象が頻繁に起こるわけですが(いわゆる「原作レイプ」というやつですね)、虫プロも過去にそういった被害にあっていたようで、今回の契約には「最終決定権は虫プロ」という内容の項目を盛り込んだようです。
はてさて、どうなることやらと思いきや、ハリウッドはある意味予想通りというか何と言うか。最初にハリウッド側が提示したCGアトム案は、もう早速原作のアトムとかけ離れています。虫プロ側は到底納得できない。というか、番組を見ていた私も納得できない(笑)。いやぁ、最終決定権持っといて正解でしたね虫プロ・・・
どうやらハリウッドのやり方では、まず市場調査をして一番人気のもの(つまり一番売れそうなもの)を採用するというのが当たり前らしいのです。今回もその方法を実施した結果、CGアトム案が原作とかけ離れたものになってしまったのだとか。様々な人種や宗教の人が暮らすアメリカでは、誰にでもわかりやすい、万人ウケするものを作ろうとするのだそうです。私はそれを聴いた瞬間、最近のハリウッドのネタ切れの原因は、まさしくここにあるような気がしました。
近年、日本のマンガやアニメが好きという外国人が増えていますが、彼らが日本アニメ・マンガのどこに惹かれているのかというと、緻密なストーリーや、考えさせられる内容が好きという人が多いのです。彼らは、わかりやすさに飽きているのではないでしょうか。わかりやすさや万人ウケというのは、ともすると画一的になりやすく、いずれ出尽くしたらネタ切れを起こしますし、飽きられやすさにも繋がりそうです。
近年の日本の若者は、最近のアメリカに飽きてきているような空気を感じます。そしてもしかしたら、それは日本だけではないのかもしれない。世界的にもアメリカに飽きが来ているのかもしれません。アメリカ文化が世界を圧巻したのは一昔前のことで、現在は、各個人が各々の好きな文化を選択する時代なのでしょう。
昔のアメリカには、フレッド・アステアやジーン・ケリーといった名人芸を疲労できる映画スターがいました。そういう映画は今見ても十分面白い。しかし、現在において、名人芸の座は、香港映画出身のカンフーアクションスターに奪われてしまっているような気がするのです。CGやワイヤーアクションを駆使した映像は、見た目の派手さはあっても、「ちょっと練習すれば誰にでもできそう」と思われてしまいます。結局のところ、人々を一番感嘆させるのは、人間の生身の動きなのではないでしょうか。(CGだらけのゲームやってるお前が言うなというツッコミは無しでw)
日本文学研究家のドナルド・キーン氏曰く、「
日本人は自らを異質な民族だと考え、日本人でなければ日本の風土や文化を理解できないと考えている。アメリカ人は、自国の文化を普遍的なものと考え、他国人はそれを理解して同調するはずだと思い込んでいる。(
参照)」だそうです。近年、日本文化が世界各国に広がりを見せ、逆にアメリカ文化の元気がなくなっている現状を見ると、なるほど納得です。
儲けを考えるのももちろん大切なことなのですが、あまりに万人ウケや儲け主義に走りすぎると、作者の「こういうものを作りたい」という気持ちを押し込めることになり、結果新しいアイデアが生まれないということに繋がるのではないでしょうか。

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